慢性的な痛み(慢性痛)では、筋肉や神経による身体的な痛み(一次的痛み)に不安や気分の落ち込みといった心の反応が加わって二次的な痛みとしての苦痛が生じることが知られています。この二次的な痛みを和らげることによって慢性痛を改善させるのが、認知行動療法を始めとした心理療法です。特に、新世代の認知行動療法であるマインドフルネス心理療法は痛みに対する受け止め方や姿勢を変えることで、不安や気分の落ち込みを改善し、生活の質や満足度を向上させることが明らかになっています
マインドフルネスとは、意識的に今この瞬間に注意を向け、そしてその瞬間瞬間に生じてくる体験に判断を加えず気づいていくことです。痛み診療センターでは、慢性痛を抱える患者さまを対象として、マインドフルネス心理療法に基づいたプログラムを提供します。プログラムは週1回2時間、全8 回で構成され、簡単な瞑想やヨガなどのエクササイズを行い、心身の安定をめざします。様々なエクササイズを通して、マインドフルネスがどんなものであるかを学び、セルフケアや生活に取り入れる工夫を探求していきます。
マインドフルネスは慢性痛やうつ病など、さまざまな病状に対して有効性が証明されています。具体的には、
などが効果として報告されています。
脳科学のデータでも、継続したマインドフルネストレーニングにより、脳の構造自体が変化して、集中力が増し、ストレスに対する抵抗力(レジリエンス)が高くなることが実証されています。
痛みには筋肉や関節や神経などさまざまな要因が関わってきます。慢性的に痛みの症状がある患者さんでは、日常生活動作を送られている中で、痛みによって正しい動作が困難であるために、痛みをカバーするような動作(代償動作)が習慣化し、痛みを増加させてしまう例が多く認められています。そのため、その日常生活動作に対して嫌悪感を抱くようになり、QOLの低下を招いています。
そこで、当センターでは理学療法は身体機能評価によって、安全かつ効果的な運動療法を行っていきます。痛みによって引き起こされていた代償動作により、筋肉が硬くなったりバランスが崩れたりすることに対しては、筋肉の緊張をほぐし痛みを軽減させることを実施していきます。
また、痛みにより動けなかったり、運動量が少ない状態が続くと、筋力低下(廃用)が見られることもあると言われています。この筋力低下がさらに動きにくくすることにより、疼痛を悪化させるという悪循環が起きます。この廃用に対しても、患者様にあった運動療法を行っていくことで、筋力低下予防を目的としてアプローチしていきます。上記の目的の他にも、有酸素運動を行うことにより体を動かす不安感を少しでも解消し、運動への爽快感を再体験できます。運動療法だけではなく、日常生活動作の正しい方法、痛みが助長されないような動作、代償動作パターンを改善する目的として、動作指導も行っていきます。
このように理学療法を通じて、精神的要因、心理的要因、解剖学的要因から痛みにアプローチし、少しでも皆様のQOL向上を図っていきます。